太陽光発電の普及を後押しする「固定価格買取制度」

コラム
2019年9月1日

コスト高がネックだった太陽光発電 制度で普及促進

固定価格買取制度は、太陽光発電の普及を促進させるために始まった制度です。もともと太陽光発電のコストは高く、普及しにくい状況でしたが、高値での買取によって普及が実現しました。

なお、最近では太陽光発電の普及が進み、買い取り価格は年々下落傾向にあります。

固定価格買取制度とは?

固定価格買取制度とは、太陽光などの再生可能エネルギーを定められた価格で買い取りする制度のことです。

太陽光などを利用して発電すると温室効果ガスが発生しないことから、地球環境に負担がかからない点がメリットである一方、発電においてスケールメリットを利用できる火力発電などとは異なり、発電にコストがかかる点がデメリットとなります。

そのため、再生可能エネルギーを普及させるための対策を講じなければ、発電コストがネックとなって再生エネルギーの発電に参入する企業や団体が少なくなるため、普及が困難な状況になってしまいます。

その対策として打ち出されたのが、「固定価格買取制度」なのです。

固定価格買取制度の特徴としては、電力の買い取り価格を国が保証すること、また、買い取り価格は一定期間続くこと、そして、発電された電力は電力会社が買い取ることがあげられます。

再生可能エネルギーの発電コストが高かったとしても、この制度により電力を高く買い取ってもらえる仕組みとなるため、再生可能エネルギーによる発電事業への参入が期待されるようになります。

さらに、参入者が増えることにより、再生可能エネルギーの発電においてスケールメリットがもたらされるようになり、再生可能エネルギーの発電の低コスト化も見込めるようになるのです。

固定価格買取制度は、再生可能エネルギーを利用した発電を普及させるためにも、必要不可欠な制度といえます。

買い取り価格の仕組みとは?

次に、固定価格買取制度における買い取り価格の仕組みについてみていくことにします。

一例として、2019年度の1kWhあたりの買い取り条件をみてみると、10kW以上500kW未満の場合は14円+税、500kW以上の場合は価格が入札によって決まります。

また、10kW未満の場合、出力制御対応機器設置義務がない場合は24円、出力制御対応機器設置義務がある場合は26円です。

なお、出力制御対応機器の設置は、北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の供給区域において義務づけられています。

10kW以上の場合は、2019年度から20年間にわたって同じ価格で電力の買い取りが行われます。また、10kW未満の場合、同じ価格で電力の買い取りが行われるのは2019年度から10年間です。

太陽光で発電した電力の買い取りが行われる期間を「調達期間」と呼んでいますが、調達期間のカウントが開始されるのは、発電した電力の供給を始めたタイミングとなります。

買い取り価格はどのように推移してきた?

2019年度の時点においては、10kW以上500kW未満の場合、1kWhあたりの買い取り価格は14円+税となっていますが、過去にはさらに高い価格での買い取りが行われていました。

買い取り価格は、2012年7月に施行された「再生可能エネルギー特別措置法」によって定められ、毎年見直されています。

10kW以上の条件についてみてみると、2012年度以降、1kWあたりの買い取り価格は以下の通りとなっています。なお、10kW以上の場合、買い取り期間は20年です。

2012年度:40円+税
2013年度:36円+税
2014年度:32円+税
2015年度
4月~6月:29円+税
7月以降 :27円+税
2016年度:24円+税
2017年度:21円+税(2000kW以上は入札で決定)
2018年度:18円+税(2000kW以上は入札で決定)
2019年度:14円+税(500kW以上は入札で決定)

固定価格買取制度における買い取り価格の推移をみると、2012年度以降、年々下落していることが分かります。その背景としては、太陽光発電の普及により、設備を設置するコストが下がってきていることがあげられます。

設備の設置コストが下がっているのであれば、買い取り価格も徐々に下がっていくのは自然の流れといえるでしょう。

そのほかの理由としては、太陽光で発電された電力の買い取り価格は、電気の利用者が負担する「再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、賦課金)」によってまかなわれているためです。

つまり、再生可能エネルギーで発電した電力の買い取り価格が高いほど、電気の利用者の負担が大きくなってしまいます。買い取り価格を引き下げるのは、賦課金の負担を軽くすることも目的となっています。

太陽光発電の普及が進むにつれて、買い取り価格は今後も下がっていくことが予想されます。太陽光発電の設置を検討しているのであれば、早めの設置が無難といえそうです。

(画像は写真ACより)