シリコン不足が化合物半導体太陽電池開発のきっかけに
太陽電池の原料はシリコンが一般的ですが、それ以外にも複数の元素を化合させた「化合物」が原料として使用されています。
太陽光発電が急速に普及した時期は、シリコン不足が問題化していましたが、それを解決するため、化合物を原料とした太陽電池が開発されました。
化合物半導体太陽電池とは?
化合物半導体太陽電池とは、原料にシリコン以外の元素を使用し、複数の元素を化合して半導体としての性質を持たせることによって作られた太陽電池のことです。
化合物半導体太陽電池が作られた背景は、太陽光発電が急速に普及した時期にシリコン不足が問題化したことがあげられます。
シリコン系の太陽電池は原料をシリコンに依存することとなり、シリコンが不足した時点で太陽電池の製造が困難な状況となりますが、化合物半導体太陽電池であれば、シリコンが不足しても太陽電池の製造が可能となるメリットがあります。
主な化合物半導体太陽電池の種類とその特徴についてみていくことにしましょう。
Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体を用いた太陽電池
Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体とは、第13族の元素と第15族の元素が用いられている半導体のことです。
第13族の主な元素としては、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)があるほか、第15族の主な元素としては窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)があります。
Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体が使用されている太陽電池としては「GaAs(ガリウムヒ素)系太陽電池」があげられます。
GaAs系太陽電池の特徴は、光を吸収しやすく、変換効率が特に高いことです。また、高温であっても出力が低下しにくいため、変換効率が安定的であることもメリットとなります。
さらに、放射線に強い性質も持ち合わせているため、宇宙空間での使用に適しています。
そのほか、「InP(インジウムリン)系太陽電池」もⅢ-Ⅴ族化合物半導体が使用されている太陽電池です。
Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体を用いた太陽電池は性能が高い反面、ガリウムやインジウムなどのレアメタルを用いるため、供給が不安定になると価格が上昇する懸念があります。
さらに、ヒ素などは毒性が高いため、環境汚染につながりやすい点も考慮しなければなりません。
CIS系太陽電池
CIS系太陽電池とは、銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)を化合した半導体で作られた太陽電池のことで、薄膜であり、多結晶であることが特徴です。
また、光吸収係数が高いこと、それに加えて直射日光が当たると出力が高まりやすいため、効率的な発電ができます。
さらに、高温時の出力が低下しにくい性質を持っており、夏場でも安定的な発電が可能です。
CIS系の化合物は多結晶であるために大量生産が可能であること、薄膜であるために資源を節約できることから、低コストで製造することができます。
CIS系太陽電池にガリウム(Ga)が加わったものは、CIGS系太陽電池と呼ばれます。ガリウムが加わることでより効率的な発電が可能となります。
テルル化カドミウム系太陽電池
テルル化カドミウム(CdTe)系太陽電池はカドミウムとテルルの化合物で作られたものです。
高温時に出力が低下しにくく、薄膜化が可能であるため、資源を節約できるメリットがあるほか、膜の製造が短時間で行えるため、低コスト化が実現できます。
ただし、カドミウムの毒性が高いことから、製造は海外でのみ行われており、日本では製造が行われていません。また、テルルはレアメタルであるため、資源の入手が不安定化する懸念もあります。
現状では、シリコンを原料とした太陽電池が一般的ですが、化合物半導体太陽電池の改良が進むことによって、今後は普及が進むことも予想されます。
(画像は写真ACより)