太陽光発電で使用されているシリコンとはどんなもの?

コラム
2019年8月27日

半導体である「シリコン」が太陽光発電では必要不可欠

太陽光発電で使用する太陽電池の原料としては「シリコン」が一般的です。太陽光発電では半導体を必要としますが、シリコンは半導体の性質を持っているうえに、埋蔵量が多いことから、原料として適しています。

また、太陽光発電が急速に普及した2000年代はシリコンが供給不足となりましたが、シリコンの使用を抑える技術が開発され、結果的に低コスト化を後押しすることになりました。

太陽光発電で使用される「シリコン」とは?

太陽光発電で使用されるシリコンとは、元素の一種である「ケイ素」のことです。なお、ケイ素とシリコンは名称が異なるものの物質としては同一であるため、以降は、原則としてシリコンと呼ぶことにします。

シリコンの特徴としてあげられることは、半導体としての性質を持っていることです。

半導体とは、電気を通す性質と通さない性質の中間の性質を持ち合わせている物質のことで、条件によって電気を通したり通さなかったりします。この性質を活用することによって、太陽電池で発電することが可能となります。

半導体として利用できる元素としては、「ケイ素(シリコン)」以外にも「ゲルマニウム」などがありますが、中でもケイ素は地殻中に大量に存在していることから、シリコンが半導体の材料として広く利用されているのです。

シリコン不足に対応した「ソーラーグレードシリコン」

シリコンの資源量は豊富であるため、入手は比較的容易といえますが、2000年代に太陽光発電が急速に普及した時期には、シリコンの供給が不足する事態となりました。

その状況を打開するため、太陽光発電向けに「ソーラーグレードシリコン」が開発されました。ソーラーグレードシリコンは、他の用途で使用するシリコンと比較すると純度が低いことが特徴です。

携帯電話やパソコンなど、精密機器に使用される半導体は高純度のシリコンを必要としますが、太陽光発電でシリコンを使用する場合、シリコンの純度が低くても発電することが可能となっています。

当時はシリコン不足が顕著であったことから、ソーラーグレードシリコンはシリコン不足の問題解決に貢献してきたのです。

シリコンの使用量を抑える「薄膜シリコン太陽電池」

そのほか、シリコンの使用を抑える太陽電池として「薄膜シリコン太陽電池」があります。

薄膜シリコン太陽電池の特徴は、シリコンの層を薄く抑えた点です。太陽光発電においては、シリコンの純度が低くても発電できることについては先述しましたが、見方を変えれば、シリコンの層を薄くしても発電は十分に可能といえます。

薄膜シリコン太陽電池は、シリコンの使用量を抑えられるだけでなく、生産コストの削減にもつなげられることから、低コスト化を実現しました。

2000年代は、太陽光発電向けのシリコン不足に悩まされたものの、2008年に発生したリーマンショックをきっかけに、シリコン不足は解消の方向へと向かいます。

その理由は、リーマンショックによる世界経済の大幅な減速です。それに伴い、太陽電池の需要がヨーロッパを中心として減少しました。

それに加えて、太陽光発電の急速な普及に対応するため、太陽電池用のシリコンの生産が世界的に増加したことから、2010年代に入ると、シリコンの供給量は不足から過剰へと転じることになりました。

太陽光発電に使用する太陽電池は、年々効率化が進んでいますが、それを後押ししたのは、資源の入手状況や経済の変化に対応してきたことが大きいといえます。

また、現在では太陽電池の原料として、シリコン以外のものも使用されています。今後の太陽光発電の進展に期待がかかります。

(画像は写真ACより)