FIT法の改正を盛り込んだ「エネルギー供給強靭化法」が可決され、2020年6月5日に成立となった。これにより、2022年4月1日へ向けて詳細な制度設計が本格化。
コロナウイルスの影響により審議の遅延が不安視されていたが、無事FIT法改正案が成立し、2022年4月から施行されることとなった。
審議の場となっていた衆参両院の経済産業委員会では、参考人質疑も同時に行われた。この場には、衆議院は環境産業技術研究機構の山地憲治氏、社会保障経済研究所の石川和男氏、日本経済団体連合会の小野透氏、そして、気候ネットワークの桃井貴子氏が参考人として出席。一方参議院は、東京大学公共政策大学院の大橋弘氏、ジャーナリストかつ環境カウンセラーの崎田裕子氏、横浜国立大学大学院工学研究院の大山力氏が参考人として出席。
研究者や大学教授、ジャーナリスト、専門家たちが出席したことが、FIT法改正案可決を後押しする形となった。可決したFIT法の改正によって法律名が「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」となった。
これに対して政府は、市場価格に一定のプレミアムを上乗せするFIP(フィード・イン・プレミアム制度)、地域間連系線などの系統増強費用の一部を賦課金方式で全国負担する新制度を創設。業務用太陽光発電所の事業者に対して設備の解体、廃棄などに係る費用の外部積立てを原則義務づけた。
FIT法案成立を受けたことで、2022年4月1日の施行に向けての政省令や施行規則の策定が始まるが、注視すべき論点がいくつかある。例を挙げると、失効期限の設定である。
事業用太陽光発電は今現在、認定取得より原則3年の運転開始期限が設けられているのだが、期限を超えても売電期間が短縮されるだけで、売電単価は維持され、認定自体は失効されない。そのことで、期限超過を前提として開発している案件もあったのがこれまでの問題点だった。
しかし、今回の改正によって、FIT法第十四条には「経済産業省令で定める期間内に認定計画に係る再生可能エネルギー発電事業を開始しなかったとき』ということが新たに加わり、失効期限の設定により、認定が失効してしまう案件が出てくることも考えられる。
施工期日の2022年4月以降、2025年に稼働予定の未稼働案件もあり、稼働する可能性が高い案件にはそれなりの配慮が必要である。事業用太陽光発電の事業者は、売電期間の終了前の10年間に源泉徴収方式により廃棄等費用を外部で積立てることになるが、一部事業者には、内部積立てが認められることになる。そして、現金での積立てだと非効率となるため、銀行保証なども認めた方が良いと考えられている。
さらに、FIPの詳細も非常に重要な論点であるため、うまく制度設計しないと資金調達に支障をきたす可能性が極めて高い。もし急激な市場変動があったとしても、こと細かく見直せるような仕組みが望ましいだろう。
FIT法案は可決されたものの、今の段階ではまだまだ課題や懸念点も少なくない。上述の懸念材料もいくつかあるが、同時にFIT法への期待の声も大きい。エネルギー供給強靭化法では、分散型電源を束ねるアグリゲータが電事法上に位置づけることになった。
FIPの制度設計と共に、将来につながる重要な改正といえる。主力電源を目指す再エネの普及拡大の妨げとならないよう、より丁寧な制度設計が追い求められるだろう。