2026年9月の台風25号では、千葉県を中心に大きな被害が発生しました。大雨によって印旛沼の堤防が決壊し、冠水した地域の太陽光発電施設では複数のパネルから火や煙が出ました。太陽光発電所は、水が引いた後も感電や発火のおそれがあるため、注意が必要です。被災してから慌てないためには、自分の発電所がどの程度水没しやすいのかを、事前に把握しておく必要があります。
水没への備えは、①ハザードマップで洪水と内水の想定浸水深を確認する、②パワーコンディショナ(PCS)や接続箱の設置高さと比べる、③被災したら設備に近づかず、50kW未満は販売施工事業者、50kW以上は電気主任技術者に連絡する、の3点が基本です。
この記事では、洪水と内水の違い、水没リスクの調べ方、既設・新設の発電所それぞれの対策と、被災したときの連絡先を解説します。
印旛沼の事例から分かる太陽光発電所の水没リスク
2026年9月の印旛沼の事例をもとに、水没した発電所でどのような問題が起きるのかを整理します。
台風25号で印旛沼の堤防が決壊し、冠水地域の太陽光施設から火や煙
2026年9月、台風25号の影響で千葉県と神奈川県では記録的な大雨となり、印旛沼の堤防が4カ所で決壊しました。成田市周辺では住宅地や田んぼの冠水が続き、冠水した地域の太陽光発電施設では、9月24日の午前に複数のパネルから火や煙が出ています。火は自然に消え、けが人はいなかったと報じられました。
出典:毎日新聞「印旛沼、応急復旧工事完了 4カ所に仮堤防整備 /千葉」(2026年10月16日)
出典:共同通信「台風で11人死亡、3人不明 千葉・印旛沼決壊で浸水広がる」(熊本日日新聞掲載、2026年9月24日)
水が引いても発電は止まらず、感電・発火のおそれが残る
太陽光パネルは、水に浸かっても光が当たれば発電を続けます。太陽光発電協会(JPEA)は、水没・浸水した太陽光発電システムでも、日射を受けていれば300V以上の直流の電気を発生し続けると説明しています。また、浸水したパワーコンディショナ(PCS)は直流回路が短絡状態になる可能性があり、ショートや発熱につながるおそれがあります。
出典:一般社団法人太陽光発電協会「太陽光発電システムの水没実験の概要(パンフレット)」(2019年4月26日発行)
出典:一般社団法人太陽光発電協会「太陽光発電設備が水害によって被害を受けた場合の対処について」(2018年7月9日)
被災後は「近づけない」こと自体が復旧を遅らせる
浸水した現場では、感電や発火の危険があるため安全が確認されるまで点検や撤去作業を進められません。その結果、復旧が遅れて売電が止まる期間も長引くことになります。
こうした被害や損失を最小限に抑えるためには、被災する前の防災対策や備えが重要です。
水没リスクは「洪水」と「内水」で考え方が違う
一口に水没といっても、水がどこから来るのかで備え方は変わります。ここでは、発電所のリスクを考えるうえで押さえておきたい2つの浸水の違いを解説します。
洪水(外水氾濫):河川・湖沼の堤防決壊や越水
洪水(外水氾濫)とは、川や湖沼の水があふれて起きる浸水のことです。浸水が深くなりやすく、水が引くまでに時間がかかることがあります。印旛沼の事例もこのタイプにあたります。
内水氾濫:排水が追いつかず低い土地に水がたまる
内水氾濫とは、大雨で側溝や排水路、下水の処理が追いつかず、周囲より低い土地に水がたまる浸水のことです。川から離れた場所でも起こるため、ハザードマップ等の確認時に見落とされやすい点に注意が必要です。
発電所の立地で多い浸水パターン
河川や湖沼の近く、田畑を転用した低い土地、造成地のくぼ地などは、特に水がたまりやすく浸水リスクが高くなります。
また、立地だけでなく敷地内の機器配置にも注意が必要です。パワーコンディショナ(PCS)や接続箱が低い位置に設置されていると、敷地全体が冠水していなくても機器が水没してしまい甚大な被害につながるおそれがあります。
自分の発電所の水没リスクを確認する3つの方法
水没対策の第一歩は、発電所がどの程度のリスクを抱えているかを把握することです。所有者やO&M担当者が自分で確認できる方法を紹介します。
ハザードマップで想定浸水深を確認する
国土交通省と国土地理院が運営する「ハザードマップポータルサイト」では、「重ねるハザードマップ」を使って洪水・内水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報を地図上に重ねて確認できます。また、市町村が作成したハザードマップは、同サイト内の「わがまちハザードマップ」から検索可能です。なお、自治体によっては洪水と内水で別々のマップを用意している場合があるため、必ず両方を確認するようにしましょう。
出典:国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」
過去の浸水履歴を調べる
自治体が公開している浸水実績図の確認や、地域住民・土地の所有者への聞き取りを行い、過去に浸水や冠水の被害があったかを調べます。また、遠隔監視システムの発電データを確認し、大雨の後に発電が停止した記録がないかを調べることも手がかりになるでしょう。
機器の設置高さを現地で確認する
パワーコンディショナ(PCS)・接続箱・ケーブルの接続部が地面から何cmの位置にあるかを現地で計測し、ハザードマップの想定浸水深と比較します。併せて、パネル下端の高さも記録しておきましょう。
| 確認項目 | 確認方法 | 記録しておくこと |
| 洪水の想定浸水深 | ハザードマップポータルサイト、市町村のハザードマップ | 発電所の地点の浸水深 |
| 内水の想定浸水深 | 市町村の内水ハザードマップ | 発電所の地点の浸水深 |
| 過去の浸水履歴 | 浸水実績図、聞き取り、発電データ | 被災した時期と浸水の深さ |
| 機器の高さ | 現地での実測 | パワーコンディショナ(PCS)・接続箱・パネル下端の地面からの高さ |
既設・新設それぞれの発電所における水没対策と、被災時の連絡先
水害リスクを把握した後は、発電所の状況に応じた対策を進めます。既設と新設では打てる手が異なり、被災した直後の連絡先も事前に決めておく必要があります。
既設発電所:点検・保険・連絡体制の見直しと改修の検討
経済産業省は、大雨による被害が想定される発電所に、屋外電気設備の隙間をふさぐことや、側溝・排水口を掃除して水はけを良くすることを求めています。あわせて、加入している保険が水災を補償の対象にしているかも確認しましょう。
また、機器が想定浸水深より低い位置にある場合は、パワーコンディショナ(PCS)の移設や架台のかさ上げなどの改修を検討します。
改修の方法は太陽光発電所の浸水リスクを減らす改修の記事で解説しているので併せてご確認ください。
出典:経済産業省「自然災害による再エネ発電設備の事故防止及び保安管理の徹底」(2025年6月5日更新)
新設発電所:立地選定と設計段階での機器の高さ設定
新しく発電所を建設する際は、ハザードマップで浸水が想定されている区域を避けるのが基本です。どうしても避けられない場合は、パワーコンディショナ(PCS)や接続箱などの機器を想定浸水深より高い位置に設置する設計にしておきましょう。
被災したら:近づかず、施工店・O&Mに連絡する
被災したら浸水した設備には近づかず、触らないことが原則です。太陽光発電協会(JPEA)は、被災時の連絡先として以下のように呼びかけています。
・50kW未満の発電所:販売施工事業者に連絡
・50kW以上の発電所:選任されている電気主任技術者に連絡
出典:一般社団法人太陽光発電協会「太陽光発電設備が水害によって被害を受けた場合の対処について」(2018年7月9日)
経済産業省も、対処は電気主任技術者や電気工事士、販売施工業者など電気の知見のある者が行うべきだとしています。また、設備が損壊した場合は、電気事業法に基づく事故報告が必要になるケースがあり、事故を知った時から24時間以内に速報、30日以内に詳報を、所管の産業保安監督部へ報告します。10kW以上50kW未満の太陽光発電設備も対象です。
出典:経済産業省「電気事故報告制度について」
被災直後の安全確保や現場点検は、上記の連絡先に依頼してください。
アップソーラージャパンでも、水没した発電所の復旧に向けて交換用パネルを供給しています。2023年度に洪水・浸水被害を受けた熊本県の発電所へ1,200枚を納入した事例があります。また、2024年度にも千葉県で洪水により水没した発電所へ452枚を供給いたしました。復旧の詳しい内容は、太陽光発電所の浸水リスクを減らす改修の記事で紹介しています。
なお、台風の強風によるパネルの飛散や破損への備えは、太陽光パネルの台風対策で解説しています。
交換用パネルの調達や、改修に使う部材のご相談はアップソーラージャパンのお問い合わせフォームから受け付けています。
太陽光発電の水没に関するよくある質問
水没した太陽光パネルは、乾かせば使えますか?
見た目に問題がなくても、内部の絶縁性能が下がっていることがあります。再使用できるかは、電気の知見のある専門家が絶縁抵抗の測定などを行って判断します。なお、太陽光発電協会(JPEA)は、水没した接続箱やパワーコンディショナ(PCS)は交換することが望ましいとしています。
水が引いた後なら、自分で点検しても大丈夫ですか?
自分で点検するのは避けてください。太陽光パネルは日射を受けている間は発電を続けるため、水が引いた後も感電のおそれがあります。点検は、50kW未満の発電所は販売施工事業者、50kW以上の発電所は電気主任技術者に依頼しましょう。
水没の被害は保険で補償されますか?
契約内容によります。加入している保険で水災が補償の対象になっているか、発電が止まった期間の売電収入の損失まで補償されるかを、保険会社や代理店に事前に確認しておきましょう。
被災したら、国への報告は必要ですか?
設備が損壊した場合などは、電気事業法に基づく事故報告が必要になることがあります。事故を知った時から24時間以内に速報、30日以内に詳報を、所管の産業保安監督部へ報告します。10kW以上50kW未満の太陽光発電設備も対象です。
まとめ
太陽光発電所は、浸水しても光が当たれば発電を続けるため、水が引いた後も感電や発火のリスクが残ります。
水没リスクは、川や湖沼があふれる洪水と、排水が追いつかない内水に分けて考えることが大切です。ハザードマップで両方の想定浸水深を確認し、過去の浸水履歴と機器の設置高さを照らし合わせれば、自分の発電所がどの程度のリスクを抱えているかが分かります。
既設の発電所は点検・保険・改修の検討、新設の発電所は立地と設計段階での機器の高さ設定が基本です。万が一の被災時に備え、被災時の連絡先や復旧・改修の相談先をあらかじめ決めておきましょう。

