太陽光発電システムの基礎・架台|現行基準(JIS C 8955:2017/設計・施工ガイドライン2025年版)の実務ポイント

架台
投稿日:2018年3月7日 / 更新日:2026年5月27日

太陽光発電システムの基礎・架台に関して、構造設計の出発点となるのが日本産業規格『JIS C 8955:太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法』(以下、JIS C 8955:2017)です。本記事では、JIS C 8955の改訂経緯から、現在運用されている技術基準・ガイドラインの位置付け、そして実務での留意点までを2026年時点の最新情報で整理します。

JIS C 8955の改訂経緯と現行版の位置付け

JIS C 8955は、もともと『太陽電池アレイ用支持物設計標準』として2004年に制定されました。当時は屋根上設置を主に想定していたため、2012年7月のFIT制度開始後に急増した地上設置案件には十分に対応しきれない面がありました。実際、台風や強風、豪雪による架台倒壊・モジュール飛散の事例が複数報告され、より厳格な荷重算定基準が求められるようになります。

これを受けて2017年3月、規格は『太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法』へと名称・内容ともに大幅改訂されました。主な変更点は以下のとおりです。

  • 設計用風圧荷重の算定方法を、設置場所の地表面粗度区分や周辺地形を反映する方式に見直し
  • アレイ角度や地上高さの影響をより細かく評価
  • 風力係数を実験データに基づいて再整理
  • 積雪荷重・地震荷重の規定を整理
  • 一方で、構造設計(部材設計)に関する内容はJIS本体から削除され、別途ガイドラインで補完する形に

2026年現在も「JIS C 8955:2017」が最新版で、これに基づいて設計を行うのが標準です。

法令上の位置付け|電技解釈の改正と新省令の制定

JIS C 8955:2017は、規格として制定された時点では参考扱いでしたが、その後の法令改正により事実上の必須基準となりました。

2018年10月:電気設備の技術基準の解釈の改正 電技解釈第46条第2項が改正され、太陽電池発電設備の支持物の設計荷重として、従来引用されていた「JIS C 8955(2004)」に代わり「JIS C 8955:2017」が引用されることになりました。これにより、新規に設計される地上設置型太陽光発電設備は実質的に新JISへの対応が義務化されました。

2021年3月31日:発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令の制定 出力10kW以上50kW未満の小規模事業用太陽光発電設備も含めて、太陽電池発電設備に関する独立した技術基準が省令として定められました。本省令とその解釈においても、支持物の設計荷重としてJIS C 8955:2017が引用され、設計の参考資料として後述のNEDOガイドラインが位置付けられています。

つまり現在、地上設置型の太陽光発電設備の支持物設計は、JIS C 8955:2017への準拠が法令上の要請であり、これを満たさない設計は技術基準違反となります。

NEDOガイドラインの位置付けと最新版(2025年版)

JIS C 8955:2017では構造設計(部材設計・接合部設計など)の内容が削除されたため、これを補完する目的でNEDOが『地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン』を整備しました。改訂履歴は以下のとおりです。

  • 2017年4月:初版(2017年版)
  • 2019年4月26日:2019年版へ改訂(使用材料の章を新設、基礎・架台・腐食防食を全面更新)
  • 2024年11月1日:2024年版へ改訂(電気設計・施工部分を追加し、名称を『設計・施工ガイドライン』へ変更)
  • 2025年4月11日:2025年版へ改訂(最新版)

最新の2025年版では、構造設計に加えて、

  • 第4章 電気設計・施工計画
  • 第13章 電気設備の設計
  • 第14章 施工
  • 第15章 維持管理計画

が新設されており、設計から施工・維持管理までを一気通貫でカバーする内容となっています。電気設備に関しては、IEC 62548-1:2023やJIS C 62548:2023(太陽電池アレイの設計要求事項)など最新の国際規格も参照されています。

なお、特殊な設置形態については別ガイドラインが整備されています。

  • 傾斜地設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2025年版
  • 営農型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2025年版
  • 水上設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2025年版

平地以外への設置を検討する場合は、該当するガイドラインを併せて参照する必要があります。

設計実務での主なポイント

JIS C 8955:2017とガイドライン2025年版に基づいて設計する際の実務上のポイントを、荷重種別ごとに整理します。

風圧荷重 設計用速度圧は、基準風速・地表面粗度区分・高さ補正係数・ガスト影響係数などから算定します。風力係数は、アレイ傾斜角や設置形態(地上設置形・陸屋根設置形・勾配屋根設置形)ごとに規定されています。沿岸部や開けた立地では風荷重が支配的になりやすく、地表面粗度区分の選定がコストにも安全性にも直結します。

積雪荷重 地上垂直積雪量は地域別の値を用い、勾配係数・雪の平均単位荷重を考慮して算定します。多雪区域では、積雪後の降雨による割増荷重や、アレイ下端に偏って積もる雪の影響も考慮が必要です。なお、JEMA(日本電機工業会)が2024年1月に追記資料を公開しており、設計用積雪量の取り扱いについて補足情報が示されています。

地震荷重 設計用水平震度に地震地域係数・用途係数を乗じて算定します。一般的な太陽光発電システムでは風圧荷重が支配する場面が多いものの、重量物(パワコン、変圧器、蓄電池等)を架台上に設置する場合や、長周期の架台では地震荷重の確認も必要です。

腐食防食 ガイドライン2025年版の第12章では、大気中の架台腐食と地中部の杭基礎腐食の双方について、表面処理の種類、異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)、地際部腐食などの対策が詳述されています。沿岸部の塩害環境ではアルミ材の採用や、鋼製杭の溶融亜鉛めっき仕様(平均皮膜80μm以上が一つの目安)が検討されます。

基礎形式の選定 基礎は直接基礎(独立・連続・べた)と杭基礎(支持杭・摩擦杭・スクリュー杭等)に大別されます。かつてコスト面で多用された単管杭は引抜き抵抗が確保しにくく、JIS C 8955:2017の風圧荷重水準では成立しないケースが多いため、現在は採用が大きく減っています。野立て案件ではスクリュー杭が主流で、地盤が弱い農地等では大羽スクリュー杭やコンクリート基礎が選択されます。

投資判断における留意点

新JIS義務化以降、架台の鋼材使用量・部材断面が増え、初期コストは2004年版当時と比べて上昇しています。一方で、ガイドラインに準拠した適正な設計を行うことは、

  • 倒壊・飛散による二次被害(人身・物損)リスクの低減
  • 損害保険の引受条件や保険料への好影響
  • 災害後の事業継続性・発電収益の確保
  • 売却時の資産価値の維持(デューデリジェンスでの評価)

といった長期的な便益につながります。FIT/FIPの売電期間20年、自家消費型でも設備の経済耐用年数を考えれば、初期コストの差は十分に回収可能なレンジに収まることが多いはずです。

アップソーラーの取り組み

ソーラーデポでは、JIS C 8955:2017および設計・施工ガイドライン2025年版に準拠した架台製品を中心にラインナップを整備しています。陸屋根用アンカーレス架台「Up-Base NEO」、垂直設置型架台「UP-Stand」など、設置形態や用途に応じた選択肢をご提案可能です。

設計用速度圧の算定、積雪地域での荷重設定、腐食環境への対応など、案件ごとの条件に応じた仕様検討も承ります。基準対応や架台選定にお悩みの際は、お気軽にお問い合わせください。

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参考文献・出典

  • JIS C 8955:2017『太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法』(日本産業規格)
  • NEDO『地上設置型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン 2025年版』(2025年4月11日)
  • 経済産業省『電気設備の技術基準の解釈』
  • 経済産業省『発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令』(2021年3月31日制定)
  • 一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)「太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法(JIS C 8955:2017)の設計用積雪量について」(2024年1月追記)