FIP時代の太陽光戦略 ― EPCが押さえるべき補助金と収益モデル(2025年版)

FIP
2025年10月10日

太陽光発電を取り巻く制度は大きく変化しています。
2025年度から主流となるFIP(Feed-in Premium)制度では、これまでのFITと違い、市場価格に連動して売電収益が変動します。
そんな中で注目されているのが、補助金と自家消費を組み合わせた新しい導入モデルです。
本コラムでは、EPC・企業・自治体が押さえておくべき補助金制度の最新情報と、FIP時代に求められる設計・施工のポイントをわかりやすく解説します。

FITからFIPへ:価格保証の時代が終わり、設計力の時代へ

2025年度、FIT制度(固定価格買取)は新規案件のほとんどで終了し、FIP制度(Feed-in Premium:市場連動型)に移行しました。
FIT導入初期(2012〜2016年)の買取単価は40円前後/kWhに達していましたが、2025年度には
FIP基準価格が11.5〜13.0円/kWh(10〜250kW未満)まで低下【¹】。

つまりEPCにとって「売電単価を上げる」よりも、
施工品質・コスト管理・補助金活用・自家消費率向上といった総合的提案力が収益を左右する時代になりました。

FIP制度の仕組みと市場変動リスク

FIPは、発電事業者が卸電力市場(JEPX)で売電した際、
その平均取引価格に「プレミアム額(補助金)」が上乗せされる制度です。
たとえば、

  • 市場価格が10円/kWh
  • プレミアム額が3円/kWh
    なら、売電価格は13円/kWh。
    ただし、電力需給が緩んだ時間帯では市場価格が6〜8円台まで下落することもあり、収益は固定ではありません

▶ 近年の市場価格推移(JEPXスポット平均)

年度平均単価(円/kWh)備考
2021年度10.4再エネ比率上昇により変動拡大
2023年度12.7LNG高騰・需給逼迫の影響
2024年度上期11.1夏場はピーク時17円超えもあり

(出典:JEPX市場データ2025年4月時点)

EPCが取るべき戦略①:自家消費+補助金の組み合わせ

電力価格が不安定化する中で、EPCが最も注目しているのが自家消費型FIP+補助金活用のハイブリッド案件。
経産省・環境省は、FIP対象外の中小企業・自治体向けに以下の補助を拡充しています。

補助事業概要補助率・上限実施機関
再エネ導入加速化
支援事業
自家消費型太陽光+蓄電池導入設備費の1/3以内、
上限1億円
経産省
地域再エネ導入
促進事業
公共施設・自治体案件設備費の2/3以内環境省
省エネ補助金
(中小企業庁)
自家消費型+高効率設備最大1/2
(上限3,000万円)
中小企業庁
都道府県・市区町村補助地域独自補助金
(例:東京都、愛知県)
併用可能、上乗せ助成自治体

2025年度は省エネ+脱炭素両面からの支援が拡大中
EPCとしては、設備選定の段階で「補助金対象条件(架台構造・工法)」を意識した設計が重要です。

EPCが取るべき戦略②:FIP型案件の構造最適化

市場連動型では、低コスト・高稼働率設計が採算性を大きく左右します。
そのために注目されているのが、次のような具体的対策です。

重点項目内容関連技術例
軽量化・アンカーレス設計屋上や古い建物でも防水保証を維持UP-Base NEO
(40kg/㎡対応)
出力制御リスク回避分散制御+蓄電池・EMS連携自家消費制御装置
短工期・省人化組立時間削減・アルミ押出一体型工具レス構造架台
維持コスト最小化サビ防止・風荷重試験済構造風洞試験データ・
施工実証

EPCが見積時にこれらの仕様を“最初から含める”ことで、
補助金採択率の向上・工期短縮・リスク回避の3点を同時に達成できます。

EPCが取るべき戦略③:リパワリングとFIP移行

2025年以降、2012〜2014年度に認定されたFIT案件の買取期間(20年)が順次終了していきます。
資源エネルギー庁によると、2026年度までに約8GW超の太陽光発電が満了を迎える見込みで、リパワリング(設備更新)市場が急拡大しています。

現場では、2010年代前半に普及した250〜270Wクラスの旧型パネルが廃番となり、同寸法での代替が難しいケースが増加している実態もあります。

アップソーラージャパンでは、国内外主要メーカーの旧モデルを網羅した旧サイズパネル対応リストを整備。既設架台を再利用しつつ、新しい高効率パネルへ更新できる「互換提案」を展開しています。
これにより、架台撤去費や設計コストを抑え、短工期・低コストでのFIP移行型再生案件が可能になります。

               

これはEPCにとって「FIP移行型再生案件」の有力な切り札になります。

今後の市場展望(2025〜2028)

傾向EPCへの影響
FIT終了案件2026年までに約8GW満了【²】リパワリング・FIP移行需要増加
自家消費市場年率+15%成長(経産省推計)工場・倉庫案件が主流化
営農型・
地域電源
農水省が許可制緩和へ【³】垂直型(例UP-Stand)のような
営農対応架台案件が拡大
補助金予算2025年度で前年比+12%
(経産省概算要求)
中小企業・自治体採択枠が増加

EPCとしては、「防水を傷つけない非貫通設置」や「FIT満了案件の再生・FIP移行対応」、「垂直型や特殊地形への設置技術」といった、現場課題に直結したテーマで差別化を図ることが重要です。
これらは今後拡大する
産業・公共分野の入札・補助金案件
で評価されやすく、受注獲得に直結する要素となります

まとめ:FIP時代のEPCは「企画・制度・技術」を統合できるか

太陽光は「設備を売る時代」から「制度を設計する時代」に入りました。
補助金・FIP・自家消費・架台構造・旧パネル再利用——これらを横断的に提案できる企業こそが、次の市場で生き残るEPCです。

Upsolar Japanでは、UP-Base NEO・UP-Standなどの製品を通じ、
FIP時代に最適化した軽量・アンカーレス対応型架台ソリューションを提供しています。
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参考・引用リスト(2025年9月時点)

  1. 経済産業省 資源エネルギー庁「令和6年度調達価格等算定委員会 資料(2025年3月)」
  2. 一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)『FIT買取満了案件動向調査 2025』
  3. 農林水産省「営農型太陽光発電の設置に関する見直し方針(2025年7月)」
  4. JEPXスポット市場データ(2021–2025年上期平均値)
  5. 環境省「地域再エネ導入促進事業 実施要領(令和6年度)」
  6. 中小企業庁「省エネ補助金 2025年度版 公募要領」
  7. PwC Japan『脱炭素社会におけるFIP制への実務対応2025』
  8. Upsolar Japan社 内部資料「UP-Base NEO 耐風性能試験レポート(2025)」