旧法の問題点解決のため、改正FIT法が施行
再生可能エネルギー特別措置法(FIT法)が施行されたのは2012年のことですが、施行後にさまざまな問題が生じるようになったため、その問題の解決を目的として、2017年に「改正FIT法」が施行されました。
改正FIT法の施行により、どのような点が変更となったのでしょうか。変更点の概要についてみていくことにしましょう。
メンテナンス(O&M)の義務化
改正FIT法の施行で変更になった内容として「メンテナンスの義務化」があります。なお、太陽光発電のメンテナンスは、一般的には「運用管理(オペレーション)」と「メンテナンス」の頭文字を取って「O&M」と呼ばれます。
「O&M」が義務化された背景としては、メンテナンス不足によるトラブルの発生を防ぐこと、そして、太陽光発電システムを長期間にわたって使用できるようにすることがあげられます。
オペレーションによって、太陽光発電システムが正常に作動しているかどうかを確認し、異常がある場合は正常な状態に戻します。
また、メンテナンスでは、定められた点検項目にしたがって点検作業を行います。点検作業は目視で行われるほか、太陽光パネルが正常に発電しているかどうかを確認するために、各種の機器が用いられます。
フェンスの設置が義務化
また、改正FIT法の施行により「フェンスの設置」が義務化されました。フェンスの設置が義務化された背景としては、太陽光発電施設に不用意に侵入することによる、感電事故やいたずらなどのトラブルを防ぐためです。
ただし、屋根に設置されているものなど、フェンスを設置しなくてもトラブルの発生につながらないと考えられる場合は、フェンス設置の対象外となります。
資源エネルギー庁が作成した「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」によると、フェンスを設置する場合は、金網などの丈夫な素材を利用し、容易に立ち入ることができない高さとすること、また、感電を防ぐためにフェンスは太陽光パネルから十分に離れた場所に設置することを求めています。
参考 資源エネルギー庁 事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)
https://www.enecho.meti.go.jp/
また、FIT法施行規則第5条の条文に基づき、出力20kW以上の太陽光発電事業者は、発電の事業計画に関する内容を記載した標識を設置する必要があります。
発電事業の認定を受けるタイミングが変更
改正FIT法の施行により、発電事業の認定を受けるタイミングが変更となっています。
改正FIT法が施行される前は、発電事業の認定を受けた後で、電力会社との接続契約と、電力買い取りの契約である「特定契約」を締結していました。
しかし、改正FIT法の施行後は、電力会社との接続契約を締結した後に発電事業の認定を受け、その後に特定契約を締結する流れとなりました。
変更となった背景としては、発電事業の認定を受けることができても、電力会社との契約が締結されないために、発電を始められない事業者が増えてしまったためです。
電力会社としては、送電できる量が決まっているために、発電量がそれを上回ってしまうと、電気の安定的な供給が困難な状態となってしまいます。
そのため、発電事業の認定を受ける場合は、電力会社との接続契約を先に行うことになっているのです。
運転開始期限が新たに設定
そのほか、改正FIT法の施行によって「運転開始期限」が新たに定められました。
運転開始期限とは、発電事業の認定を受けてから一定期間内に太陽光発電を稼働させなければならない期限のことで、その期限を過ぎるとペナルティーが科せられます。
10kW以上の太陽光発電については、認定から3年が経過すると買取期間が短縮されます。そのため「3年ルール」と呼ばれることがあります。
また、10kW未満の太陽光発電に関しては、認定から1年が経過すると認定そのものが失効となります。
発電事業の認定を受けた後、太陽光発電を稼働させるまでに期限が設けられた背景としては、買い取り価格は発電認定を受けた時点の価格であるためです。
買い取り価格は、太陽光発電の低コスト化もあり、年々低下の傾向にありますが、見方を変えれば早い段階で認定を受けることができれば、高値で電力を販売できてしまいます。
太陽光発電が低コスト化している状況で買い取り価格が高ければ、電力を買い取っている国が損をすることになります。それを防ぐために、運転開始期限が定められているのです。
買取義務者の変更
改正FIT法の施行により、買取義務者が変更となっています。
施行前は小売電気事業者が電力を買い取っていましたが、施行後は送配電事業者が買い取ることになりました。
なお、2017年に資源エネルギー庁が公表した「改正FIT法に関する直前説明会」によると、2017年3月31日までに買取契約が締結された場合は、引き続き小売電気事業者が買い取りすることになります。
参考:資源エネルギー庁 改正FIT法に関する直前説明会
https://www.enecho.meti.go.jp/
小売電気事業者に当てはまるのは電力会社であり、送配電事業者に当てはまるのは電力会社の送配電部門となります。なお、電力自由化後は多くの小売電気事業者が参入したほか、送配電に特化した企業も増えてきています。
再生可能エネルギーは、他のエネルギーと比較すると歴史が浅いこともあり、FIT法が施行された当初はさまざまな問題が生じましたが、改正FIT法の施行により、それらの問題は解決の方向へと向かっています。
太陽光発電の事業者は法律を遵守して、適切に運用していくことを心がけましょう。
(画像は写真ACより)